2010年03月05日

『フローズン・リバー』レビュー

『フローズン・リバー』
製作年 2008( アメリカ)97分
カテゴリー:ドラマ
監督:コートニー・ハント
キャスト:メリッサ・レオ、ミスティ・アップハム、チャーリー・マクダーモット、マーク・ブーン・ジュニア、マイケル・オキーフ

レビュー(☆☆☆☆☆)

2008年度サンダンス映画祭のグランプリを受賞し、クエンティン・タランティーノが絶賛した『フローズン・リバー』をシネマライズで観た。
この映画は、無名の監督のコートニー・ハントの長編デビュー作で、キャストも有名な役者は出演していないためか、日本では配給会社が付かず、公開が危ぶまれていたため、シネマライズが買い付けて公開されたらしい。
 確かに、ストーリーも地味で、宣伝材料になるのはサンダンス映画祭のグランプリくらい映画だが、テレビ局製作の、毒にも薬にもならない映画を観て大切な人生の時間を無駄にするくらいなら、この映画を見ろ!!と言いたい。
 とは言っても、暇つぶしの人生を歩んでいるような奴らには、何も響かないだろうが、人生の何かと戦っている人間には、何かしら”ガツンicon09”とくる映画だと思う。
 人生は戦いだとオイラは思う。生きている間は、何か”と戦い続けなければならない。
その何かは、不安だったり、貧困だったり、自分の弱さだったり、人それぞれ違うだろうが、時には打ちのめされたり絶望したりしながらも、それでも、戦い続けなければならない。この映画は、そういう種類の映画だ。

 ストーリーは、カナダとの国境に面した、先住民「モホーク族」の保留地を抱える田舎町に住む、5歳と15歳の男の子の母親の白人女性レイ(メリッサ・レオ)は、新しいトレーラハウスを買うために金を貯めていたが、ギャンブル狂いの夫は、そのお金を持って蒸発する。1ドルショップで働く彼女は、子どもたち食べさせる食費にも事欠くほど(朝食がポップコーン)、切羽詰っている日々を過ごしている。

 ある日、彼女は蒸発した夫の車を乗っていた、モホーク族の女ライラ(ミスティ・アップハム)と知り合う。彼女もまた、経済的な理由から義理の母に1歳の息子を奪われてしまったいた。ふたりは、儲けを山分けすることを条件に、凍りついた川を渡り国境を越えて「不法移民を運ぶ」という危険なアルバイトですることになる。

 映画の中盤にある奇跡が起こる。
その奇跡は、犯罪に手を染めながらも、人として、そして母親としての尊厳から、自らのリスクを顧みず もたらされた奇跡だ。

 この二人の主人公レイとライラは、決して自分たちの現状を愚痴ったりしないで、ただ黙々と行動する。そこがこの映画の素晴らしいところだ。

脚本家が頭の中で創作したような、陳腐で勿体ぶったセリフなんか一切出てこない。

 この映画を、いつも無駄な会話のシークエンスだらけの映画を作るタランティーノが絶賛してるのも面白いが、タランティーノは本当に映画の本質を見抜く本物の目を持っているクリエーターだと思うし、この映画を配給したシネマライズは偉い!!icon14と思う。

それに比べて、こんないい映画を配給しない金儲けしか興味のない腰抜け配給会社には、心底ガッガリだぜface07
映画はただの娯楽でビジネスだけど、文化・芸術でもあるんだぜface09
 マンガ原作でテレビ会社制作の”おこちゃま”映画ばかり作っていると、いつか日本の映画文化は取り返しがつかないほど、幼稚なものになっちまうぜ!(余談ですが。。)

 とにかく、この映画は地味だけど、貧困から犯罪に手を染めながらも、ほんの小さな希望を見出そうともがく二人の姿に、打ちのめされるはずだ。

 自分の窮地を嘆いているだけでは、何も起こらないし、誰も手を差し伸べてはくれない。
自分の人生は、自分でつかみ取るしかないのだ。
人生は厳しいが、戦う価値がある。そう思わされる映画だ。



 

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この記事へのコメント
はじめまして。
こんにちは。『フローズンリバー』の感想にとても共感したのでコメントしました。☆五つの映画をまとめたカテゴリなどあるのでしょうか。

また覗きに来たいと思います。
Posted by koeda at 2011年05月24日 18:02
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