2011年05月01日

『アンチクライスト』レビュー

『アンチクライスト』
原題:(Antichrist)
製作年/国:2009年
製作国:デンマーク、ドイツ、 フランス、 スウェーデン、イタリア、 ポーランド
カテゴリー:ドラマ
上映時間:104分
監督・脚本: ラース・フォン・トリアー
撮影: アンソニー・ドッド・マントル
キャスト:ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール

レビュー(☆☆)



2009年のカンヌ国際映画祭で初上映され、物議を醸した『アンチクライスト』が
やっと、日本で公開されたので、渋谷に観に行った。


ラース・フォン・トリアーと言えば、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ドッグヴィル』
『マンダレイ』など、実験的な手法で人間の本質を剥き出しにし、観る者をこれでもかと
不快にさせる映画を撮る監督だ。

『アンチクライスト』は反キリストの意味なんだけど、
ラース・フォン・トリアーの撮る映画は間違いなくアンチデートムービーだ。
決して、こんな映画をデートで観てはいけない。

昔、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』を観に行って、
エンドロールが終わる前にエレベーターに乗った時に、一緒になったカップルの会話。

女「失敗したね~。意味わかった?」
男「あ~。最後に踊って、人生は祭りだってことだよ」(爆)
オイラは、思わず吹き出すのを堪えるのに必死だった。
別にバカにして笑いそうになったのではない。

映画なんてただの娯楽で、観たいものを観ればいいだけの話だ。
ただし、映画というやつは、したたかで、油断がならない。
シンプルで間の抜けたようなコメディー映画にさえ、魂を鷲摑みにされるようなシーンや、
人生を変えてしまうほどの映画になるかもしれない。

つまり、映画はそれほどのパワーを持っているのだ。

『8 1/2』やゴダールの映画を観るには、それなりの準備というか
鍛錬というか、映画が表現するボキャブラリーを増やさないと、
一体なんのことについて語っているのかさえ判らないという事態になってしまう。

『8 1/2』を観にいった例のカップルは、たぶんの何の予備知識もなく、
観に行ってしまったんだろう。

でも、それが『アンチクライスト』でなくてよかった( ̄ε ̄)。

で、思い出したのが、これも昔の話だが、イタリア映画際だかのイベントで
『ソドムの市』を観に行ったら、どう見てもデートで映画を見に来ましたと言う感じの
初々しい高校生のカップルがいて、
オイラは「デートでこんな凄まじい映画観ても大丈夫か?ヾ( ̄o ̄;)オイオイ」と
忠告したくなったことがある。
まあ、人は見かけに寄らないので、彼らが人間の業について、
非常に造詣が深い人生の探求者かもしれないから、
おせっかいな忠告などはしなかったが、
もし、そうでなかったら、映画を見た後、
二人は非常に気まずい状況に陥っていたはずだ。(笑)
しかし、それもまた、甘酸っぱい青春の1ページ(死語)(笑)



話を『アンチクライスト』に戻すと、この作品もまたラース・フォン・トリアー映画らしく
思いっきり不快な気持ちになり、観賞後の後味の悪さと言ったらないね。

なんでわざわざ、こんなネガティブな気分になる映画を
観に行ってしまったんだと後悔さえしてしまう。

DVDを買って何度も、自宅で鑑賞したいという人は、そう多くはないんじゃないだろうか?
オイラの偏見かもしらないが。。。。(´。`)

ストーリーは、ウィレム・デフォーとシャルロット・ゲンズブールが演じる夫婦が、夜、
性交中に子供が窓から転落して死んでしまう。

妻は自分を責め、崩壊していくが、
精神カウンセラーの夫は、妻を救うべく、山小屋で妻と暮らしながら、悲劇と向き合おうとするが、
人間のエゴや、狡猾や、恐怖や、業やらが絡み合って、まるでホラー映画のような展開になっていく。
怖い(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル…
で、プッツン( ゜д゜)と行った妻は、夫の○○をXXして、ボルトで足を○○したりして。
オイラはヒィ─━─━((ヘ(; >Д< ||)ノ))━─━─ッ!!ってな感じで、正視できないほどだった。
(実際、カンヌの上映でも、何人かが失神したらしい。。。(;´д`)トホホ…)

で、ラース・フォン・トリアーは、凄まじい描写で、人間の本質を剥き出しにしたのか?

というと、映画の前半は、観念的は話が続き、
後半近くは急にスプラッタ映画の様な強烈なシーンに、オイラは
『一体、何について語っているんだ(@_@)???』と宙ぶらりんな印象を持った。
ただし、ラース・フォン・トリアーは人の気分を悪くさせる天才だ。

『ドッグヴィル』『マンダレイ』では、スタジオに骨組みだけの舞台装置のセットを組んで
人間の本質にあれほど迫った監督が、『アンチクライスト』では、
大胆な性描写を多様した割には中途半端な
ただ、残酷なシーンが多いだけの平凡な映画になったように思える。

しかし、見終わった後の不快さは、筆舌しがたい。

くれぐれも、デートでは観ないように( ̄○ ̄)


ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]
ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]
  


Posted by アイスH at 00:09☆☆レビュー