2010年02月21日

『 Dr.パルナサスの鏡』レビュー

『 Dr.パルナサスの鏡』
製作年 2009( イギリス/カナダ)124分
カテゴリー:ファンタジー
監督:テリー・ギリアム
出演:ヒース・レジャー/クリストファー・プラマー/ヴァーン・トロイヤー/アンドリュー・ガーフィールド/ジョニー・デップ/コリン・ファレル/ジュード・ロウ

レビュー(☆☆☆)

ヒース・レジャーの遺作『Dr.パルナサスの鏡(原題:THE IMAGINARIUM OF DR. PARNASSUS』を観た。
監督は、『未来世紀ブラジル』『12モンキース』の奇才テリー・ギリアム。
 ヒース・レジャーは バットマンの宿敵ジョーカー役でアカデミー助演男優賞を受賞した『ダークナイト』撮影直後、本作の撮影中に急死した。
 『ダークナイト』で見せた彼の演技は、本当に鬼気迫るものがあった。

 本物の狂気を体現できる数少ないアクターの最後の演技はコミカルな悲哀を漂わせつつ、肩の力を抜いて自由に演じているような印象を受け、新たな彼の一面を見る事ができる。色んな引き出しを持った役者だったろうが、28歳の若さで亡くなるとは、本当に残念だ。

 ヒース・レジャーの急死に伴い、未撮影シーンを、彼の親友のジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが代役を努め、完成したとの情報を本で読んでいて「ヒースが殆ど出てこないんだろうなあ」と勝手に想像していたが、意外にもヒースが出ずっぱりでジョニー・デップらの代役シーンは、鏡の世界に入った時に顔が変わるという設定になっているので違和感なく、逆に代役それぞれのパートが各役者の色が出ていて楽しめた。

 この映画はヒース・レジャーだけが売りの映画ではなく、Dr.パルナサスと悪魔のやり取りも非常に面白し、奇才テリー・ギリアムが生み出す、ビジュアルも凄い。

日本では、この手の映画は受けないらしくて、オイラの近所のシネコンでも早々と打ち切りになってしまった。残念。
 また、役を引き継いだジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが、それぞれのギャラを当時2歳のヒースの娘に寄贈したという美談にも心打たれる。

 あと、うちのカミサンがこの映画をみて、ヒース・レジャーとジョニー・デップが似ていたため、ジョニー・デップが何処に出ていたのか全く判らなかったらしく、しかも、コリン・ファレルのパートでは『ブラピも出てるのね』とか勝手に思っていたらしい。( ̄○ ̄)ジョニー・デップの美談が・・・・・(;´д`)トホホ…


  

Posted by アイスH at 00:49☆☆☆レビュー

2010年02月19日

パラノーマル・アクティビティ

『パラノーマル・アクティビティ』
製作年 2009(アメリカ)86分
監督:オーレン・ペリ
キャスト:ケイティ・フェザーストーン、ミカ・スロート
レビュー(☆☆)


低予算でドキュメンタリー・タッチのホラー映画と言えば、「ブレアウィッチプロジェクト」の悪夢(いろんな意味で)を思い出す。(笑)

 この映画は、100万円という超低予算映画で製作され、スピルバーグがリメイクをしようとしたが、これ以上の恐怖を演出することができないと断念したというエピソードも加わり、全米で爆発的ヒットした映画だ。

 「ブレアウィッチプロジェクト」がヒットした時は、ホームビデオで撮ったチープな映像を逆手にとって、インターネットを効果的に利用して本当に起きた事件のように宣伝したため、低予算にも係わらず、口コミで大ヒットした。
 しかし、恐怖映画としては、「何かいる・・・・。何かが起きる。ワァーー!ギャ~~!」にみたいなことを言って、結局、何も起こらずみたいな映画で、オイラは心底『金返せ~!』と思った映画だった。face07
 この『パラノーマル・アクティビティ』も、「ブレアウィッチプロジェクト」の悪夢再びか!!と思って観たが、前半は案の定、固定カメラで一晩中、寝室で寝ているカップルを映した映像に、変な音が録れていたり、ドアが勝手に閉まったりするだけで、肩透かしを食うが、中盤あたりから徐々に異常な現象が多発するにつれ徐々に恐怖が増す上手い演出をしている。
 後半の何分かの映像は、スピルバーグの意見を取り入れて撮り直しただけあって、結構、怖いし、低予算でも、アイデアと演出で見ごたえのある映画だと思う。
 特にラストも衝撃的な結末で、「ブレアウィッチプロジェクト」とは、まったく違って結構怖いface04

 ただ、ホラー映画としては、マイ・ベスト・ホラー映画の『エクソシスト』や『ザ・リング』のラストには、遥かに及ばないface15
 この映画は、”スピルバーグがリメイク・・・云々”と宣伝するよりも、「ブレアウィッチプロジェクト」がインターネットを効果的に使って集客したような方法で、何の予備知識もなく、本当に起きた事件の映像と思わせて見せた方が、より恐怖を味わえる映画になったと思う。
 ただ、100万円で何十億も稼ぐビジネスとしては、最高だが。。。。。face03

  

Posted by アイスH at 13:30映画レビュー

2010年02月09日

『かいじゅうたちのいるところ』レビュー

『かいじゅうたちのいるところ』
製作年 2009(アメリカ)101分
監督:スパイク・ジョーンズ
原作:モーリス・センダック
脚本:スパイク・ジョーンズ、デイブ・エガース
キャスト:キャサリン・キーナー、マックス・レコーズ
レビュー(☆☆☆☆☆)


息子が幼稚園の頃にモーリス・センダックの名作絵本「かいじゅうたちのいるところ」を、読み聞かせた。
絵本は確か20ページくらいのシンプルな絵本だったと思う。

 その絵本を原作に、「マルコヴィッチの穴」の曲者スパイク・ジョーンズが映画化したというので、今では、すっかり腕白小学生に成長した息子とカミサンと『かいじゅうたちのいるところ』(日本語吹き替え版)観に行った。

 ストーリーは、いたずら好きな7歳の少年マックスが、母親とケンカをして家を飛び出し、船に乗って何日も海に渡り、やがてかいじゅうたちの住む島に辿り着く。
 彼らの王様になったマックスは、かいじゅうたちと一緒にみんなが幸せになれる世界を築こうとするファンタジー映画だ。

 子供と毛むくじゃらの奇妙な”かいじゅう”達のこの映画は、ただのお子ちゃま映画ではない。

 大体、かいじゅうたちはトトロのように可愛いいわけでもないが、みんな何か困ったような何とも言えない表情をしているのが非常に良い!( ̄∀ ̄)

しかも、みんな一癖あって、最初マックスを『喰っちまおうぜ!』とか詰め寄ったりするが、マックスに『僕は王様だから、そんなこと言っちゃあダメだよ』と言われるとすぐに納得してしまような憎めない奴らだ。

 実際かいじゅう達は、王様を必要としていた。

それぞれ色んな悩みみたいものを抱えていて、自分たちでは何も決められずオロオロしているところに、突然現れたマックスが王様だと聞いて彼らは大喜びする。
 マックスが彼らの前に現れた時、リーダー格の暴れん坊だけど本当は優しいキャロルと、理知的でクールなCJ間には、軋轢が生じていた。
キャロルは腹いせに仲間の住む家をぶっ壊すが、まわりのかいじゅう達は、ただオロオロとするだけで何もできない。
 彼らの望みは、ただ、昔みたいにみんな仲良く遊んで、重なり合って眠ることだけなのに( ´ρ`).。o○
 
 島の荒涼とした砂漠や砂浜や森は、少年の心象風景なんだろう。
かいじゅうたちは子供から見た大人のメタファーかもしれないし、少年の心の奥にある残酷性の現れなのかもしれない。
 この映画はその辺の表現が卓越していて、少年特有の危なっかしさとか、残酷性を実に上手く表現している。

 例えば、かいじゅうたちが王様のマックスの指示で、踊りを踊ったり、泥団子合戦をやったりする時、鋭い爪で木を引っ掻き、森の木をなぎ倒し、仲間のかいじゅうをおもいっきり放り投げ、相手の頭をめがけて泥団子を投げつけ吹っ飛ばしたり、大人が見ていたら、危ないってΣ(`□´ ;)!!って、怒られるようなことばっかりする。
 うちの悪ガキ小僧の息子や近所の腕白小僧も、そして、かつてのオイラもみんな、一歩間違えたら死んじゃうぞというような事をやるものだ。
 オイラもガキの頃は、友達と崖から飛び降りたり、隣接する雑居ビルの屋上から隣のビルの屋上に飛び移ってみたり、今考えるとよく死ななかったと冷や汗がでるようなことばかりしていた(;´Д`)
 これは、かつて少年だった大人ための映画かもしれない。みんな心の中に、かいじゅうたちがいたのかも(´∇`)

 でも、この映画は決してホノボノだけではない毒がある。そこがいい。

 特にいいのは、ラストのマックスが船に乗って帰るシーンで、日本のアニメだったら、なんか感動的なシーンにしがちなんだけど、キャロルが気の利いたセリフなんか、一切言わないところが実にいい( ̄∀ ̄)

お勧め!!だけど、面白いかどうかは、見る人がどんな子供時代を過ごして来たかとかで、変わるような気がする。




  

Posted by アイスH at 02:09☆☆☆☆☆レビュー

2010年02月07日

『サロゲート』レビュー

『サロゲート』
製作年 2009(アメリカ)89分
監督:ジョナサン・モストウ
キャスト:ブルース・ウィリス ラダ・ミッチェル ロザムンド・パイク
レビュー(☆☆)

最近、本当に忙しくて、熱帯魚の水槽は藻が生えても水を換える時間もなく、もちろんテレビなんて、ここ何日間は1秒も見ていない。
今でこそ、オイラは冬はスノーボーに行ったりしているが、元々はインドア派なので、冬は家の中に引きこもっていたい。

できれば、冬だけではなく、ずっと、引きこもって本を読んだり、レンタルDVD借りてみたり、もう一生観る事も不可能と思われるほど録りためたTVドラマやスペシャル番組やらを見ていたい。できれば、TVゲームとかやって、『あ〜暇だ〜(´∇`)』とか言ってみたい。

 と思いつつ、忙しいのに、SF『サロゲート』を観た。ストーリーは、近未来に人類の98パーセントが「サロゲート」と呼ばれる自分の分身ロボットを、自宅から遠隔操作することで生活しているって話なんだけど、自分で遠隔操作しなきゃならないなら、ずっと忙しいままじゃん( ̄○ ̄)と思い、あんまり羨ましい未来ではないなあと思いながら観た。

 この映画の最高に素晴らしい所は、たった89分でサクッと終わるところ(笑)

 なにせ忙しいんで一言で言うと、10年前ならCGも内容もスゲーと思ったかもしれない話も、今では陳腐にみえてしまうんだけど、余計なファイトシーンとか、カーチェイスとかなくて、スピーディーに話が進む分、深みってものが全くない映画だな( ´⊿`)y-~~

 ブルース・ウィリスもなんか、力抜いているって印象なんだけど、彼が出ていなかったら、金の掛かったB級映画になったかな。
つまり、ブルース・ウィリスのお陰で、引き締まったって感じの映画。  

Posted by アイスH at 04:31☆☆レビュー

2010年02月07日

『キャピタリズム~マネーは踊る~』レビュー

『キャピタリズム~マネーは踊る~』
製作年 2009(アメリカ)120分
監督:マイケル・ムーア
キャスト:マイケル・ムーア
レビュー(☆☆☆)

 マイケル・ムーアは、これまでにアポなし突撃取材で、アメリカが抱える様々な問題に鋭いメスを入れてきた。

銃規制問題の『ボウリング・フォー・コロンバイン』、当時のブッシュ政権を痛烈に批判した『華氏911』、
『シッコ』では医療制度の矛盾を。。。

 「100年に一度」と呼ばれる世界同時不況でGMは倒産し、失業者は溢れ、ローンの滞納で自宅から追い出される人々が急増する一方で、その原因を作った、投資銀行や保険会社は公的資金で救われ、しかも、役員達は1億円以上のボーナスを手にしているという。

 マイケル・ムーアが今回取り上げたテーマは、資本主義という巨大なシステムだ。
今回も彼はアポなしでウォール街の投資会社や銀行に税金を返せと乗り込むが、もはや彼は有名になり過ぎて、天下の宝刀”
アポなし取材”で敵を捉える事は出来ず、銀行の玄関で警備員相手にパフォーマンス的なアジテートをするしかない。

 「キャピタリズム(資本主義)」とは、「合法化された強欲なシステムのことだ」と彼は指摘する。

「テーブルに10切れのパイがあって、ひとりの人間がその9切れを自分のものだと言い、残りの9人が残った1切れを奪い合う。それは間違いだ」とface15


 以前、英会話の番組を見ていたら、解説のおじさんが『”それはアンフェアだよ”というのは、アメリカでは少し子どもっぽい
いいかたなので、あまり使わないほうがいいですね。なぜなら、世の中は不公平なものだから』みたいなことを言っていたのを思い出した。

 ホワイトハウスや連邦議会をも意のままに操るウォール街のエリートたちに、『お前らだけ9切れパイを取るのは不公平だ』と
訴えても、彼らは『なにを馬鹿みたいなこといってるんだ?世の中は不公平なものだんだよ』とせせら笑われるだけだろう。

ハーバード大学などの有名校を卒業したエリートたちは、その明晰な頭脳を駆使して、ピラミッド構造の頂点へと
金が流れるシステムを作り出していく。

 例えば、金融専門家も説明できないデリバティブ(金融派生商品)だ。頭脳明晰なエリート達は、専門家ですら理解不能な数式を使い、ピラミッドの下層から頂点へ金が流れる複雑なシステムを作った。

 低所得者が組んだサブプライムローンが破綻し、世界中にバラまかれた詐欺的な金融商品が世界の経済を混乱に落とし入れても、
複雑なシステムのお陰で、その金がキッチリ強欲な資本家達の懐を肥やし、ローンを滞納した者は、銀行に家を差し押さえられて、
ホームレスになってしまう。

 では、家を差し押さえた銀行も、その一味かと言うとそうでもない。銀行もまた、強欲な資本家たちに金を運ぶ中間業者でしかない。

あくまでも、「9切れのパイを強欲な奴らが奪い、残りの1切れその他の人間が奪い合う」だけに過ぎない。
 
 しかし!とオイラは言いたい( ゚д゚ )!。
あの『おとぼけサル顔』のジョージ・ブッシュを2回も選んでおいて、そりゃあ、自業自得じゃね?と( ̄‥ ̄) = =3

 原油が高騰した時にブッシュは、『石油の代わりにバイオ燃料作ればいいじゃんface03』と『おとぼけサル顔』でおっしゃっていたが、大型のSUVをたった1回、満タンにできるバイオ燃料を作るには、アフリカの飢餓で苦しむ地域の一家族が数ヶ月間食べていける量のトウモロコシを必要とする。

しかし、強欲な投資家には、そんな事は関係ない。今回の映画で、マイケル・ムーアが会う事すらできなかった強欲な資本家の代表
みたいな奴がブッシュだ。

 地球の温度が上昇しようが、世界のどこかで自分の知らない誰かが餓死しようが、ローンを払えなくてホームレスになろうが、
自分たちにはどうでもいい事だから。。。。
 
 無知は罪だ。本質を知ろうともせず、何も考えもしないと、いつの間にか、ずる賢い奴らの片棒を担ぐ羽目になるかもしれないし、
搾取され彼らに金を運ぶ道具のような扱いを受けるかもしれない。

ところで、日本はどうですか?高速道路が、只になったと浮かれて、大した用もないのに車で遠出して喜んでいて、本当に大丈夫!?






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Posted by アイスH at 03:44☆☆☆レビュー